訪問看護では、利用者さんの爪切りを希望されることがよくあります。特に高齢者や麻痺・拘縮がある方の場合、爪のケアは難しく、家族から「自分では怖くてできない」とお願いされることも少なくありません。爪のケアが適切に行われていないと、歩行の不安定さや転倒リスクが高まるため、訪問看護師にとって大切なケアの一つです。
爪切りの目的は「トラブル予防」「清潔保持」「損傷の予防」です。ただし、爪を切るだけではなく、爪の色や形、角質、周囲の発赤や腫れ、痛み、炎症、保清の状態なども観察することが重要です。
実際の爪カットでは、基本的に「スクエアカット」を行います。爪の角を落としすぎず、適切な長さに整え、鋭利な部分はヤスリを使って丁寧に処理します。しかし、限られた時間内でのケアが求められるため、安全性と時間のバランスを取りながら作業を進めることが求められます。
使用する道具としては、爪切り、ニッパー、ゾンデ、爪やすりが一般的ですが、必要に応じて角質削りや電動角質リムーバーなども利用します。
高齢者にとって、爪のケアが不十分だと痛みが生じることがあり、これが原因で歩行が不安定になり、転倒のリスクが高まります。転倒による骨折が発生すれば、歩行困難や寝たきり状態、さらには認知症のリスクも増大します。
訪問看護師としては、利用者さんの爪のトラブルを予防し、生活の質を維持・向上させるために、日々の観察を通じて爪のケアを提案することが大切です。もし爪のトラブルが見つかった場合、そのケアによって防げるリスクについて丁寧に説明し、利用者さんが納得してケアを受け入れるようサポートしましょう。
爪のケアは小さな作業に見えますが、利用者さんの生活に大きな影響を与えることがあります。安心してケアを提供することで、利用者さんの健康維持に貢献できることを心に留めておきましょう。